品質とは「検査の数」でカバーするものじゃない

生産技術として、どうすれば不良を減らせるのか、どうすれば安定して量産できるのか。そんなことをずっと考えて仕事をしてきました。

今は立場が変わって、製品を売ったり、マーケティングをしたり、全国のいろいろな工場を見る仕事をしています。

そこで最近、改めて感じていることがあります。

やっぱり製造業は「品質」だな、と。

もちろん、品質が良ければ売れるという話ではありません。

良い製品でも、知られなければ売れません。価格も大事ですし、マーケティングも必要です。

ただ、どれだけ売り方が上手くても、製品そのものが悪ければ長くは続きません。

だから最近、もう一度「品質」について考えるようになりました。

目次

検査を増やせば、品質は良くなるのか

製造現場で品質問題が起きると、よく検査が追加されます。

ここも測定しましょう。

チェック項目を増やしましょう。

公差をもっと厳しくしましょう。

もちろん必要な検査はあります。

私自身、計測や評価の仕事も長くやってきましたので、検査が大切なのはよく分かっています。

でも、検査を増やすことと、製品の品質を良くすることは別の話です。

完成したものを10回測っても、100回測っても、製品そのものが良くなるわけではありません。

更に言えば、検査って、利益を生み出せるものではないという事も忘れてはなりません。

設計へのフォードバックの大切さ

例えば、組立工程で寸法が安定しない。

作業者によって出来栄えが変わる。

調整にものすごく時間がかかる。

こういう問題が起きたときに、現場に「もっと注意してください」と言うのは簡単です。

でも、本当にそれでいいのでしょうか。

そもそも、この公差は製品の機能や安全性に対して本当に必要なのか。厳しくすれば安心というものではありません。用途に必要な精度を確かめてから、工程能力や測定方法を考えるべきだと思います。

この部品は二つに分かれている必要があるのか。

なぜ組み立てた後に、人が微調整しなければならないのか。

私はそちらが気になります。

現場が頑張らないと作れない製品より、普通に作れば普通に良いものができる製品のほうが、私は良い設計だと思っています。

部品を一つ減らすほうが面白い

私は昔から、こういう改善が好きでした。

部品を一つ減らせないか。

ねじを一本なくせないか。

二つの工程を一つにできないか。

調整そのものをなくせないか。

これができると、コストが下がるだけではありません。

組み間違いも減ります。在庫も減ります。管理するものも減ります。

何より、不良が発生する可能性そのものを減らせます。

高性能な検査装置を入れて不良を見つけるのも技術ですが、不良が起きる場所そのものをなくしてしまう。

私は、こっちのほうが技術者として面白いと思っています。

品質とコストは、本当に反対なのでしょうか

「品質を上げるとコストが上がる」

よく聞く言葉です。

確かに、検査を増やせばコストは上がります。

高価な部品に変えても上がります。

でも、構造をシンプルにすることで品質を上げるのであれば、話は逆です。

部品が減る。

工程が減る。

調整が減る。

不良も減る。

結果的にコストも下がります。

品質とコストは、必ずしも反対側にあるものではないと思っています。

むしろ設計を突き詰めていけば、同じ方向に向かうことができます。

良い製品だけでは売れない。でも最後は製品に戻ってきます

今の私は、マーケティングの仕事もしています。

そこで痛感したのは、「良いものを作れば売れる」という時代ではないということです。

これは間違いありません。

どんなに良い製品でも、その価値を伝えられなければ売れません。

でも一方で、マーケティングだけで何とかなるとも思っていません。

広告が上手くいって最初の一台が売れたとしても、実際に現場で使えば分かります。

壊れないのか。

安定して動くのか。

使いやすいのか。

そして、本当にお客様の困りごとを解決できているのか。

結局、最後は製品そのものに戻ってきます。

「検査を増やす前にできることはないか」

私は、検査を否定したいわけではありません。

製品の安全性や法令、工程のリスクに応じて、必要な検査は欠かせません。ただし、検査項目や頻度は目的と根拠に基づいて決めるべきだと思います。

ただ、品質問題が起きるたびに検査を増やしていけば、いつか現場は検査とチェックシートだらけになります。

だから、その前に一度考えたいのです。

この検査、本当になくせないのか。

そもそも、この不良が起きない構造にできないのか。

作業者が頑張らなくても、自然と正しく組み上がるようにできないのか。

品質とは、検査項目の多さではありません。

私は、余計なことをしなくても、当たり前に良いものができることだと思っています。

検査で品質を守る前に、設計でもっとできることがないか考える。

製造業に長く関わってきた人間として、私は今でもこの考え方を大切にしています。


品質改善を、検査だけで終わらせない

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