工場の改善活動では、生産性が何%上がった、工数が何時間減った、設備投資をいくら抑えた、といった成果がよく語られます。もちろん、どれも大切です。でも私は、改善が成功したときに、もう一つ考えたいことがあります。
そこで生まれた時間や余力を、次の何につなげるのか。
同じ製品を、もっと安く、もっと早く
前職で生産技術の仕事をしていた頃、私は日々、生産性の改善に取り組んでいました。製品の生産量が減っていくなかでも、会社の売上や事業を支えるため、同じモデルをいかに低コストで、効率よく作るか。そんなことを考え続けていました。
品質を安定させる。設備投資を抑える。古い設備を別のモデルにも転用できるようにする。仲間と一緒に知恵を出し、実際に現場が変わっていくことに、私は大きな達成感を感じていました。今振り返っても、生産技術は私の大好きな仕事です。
改善して生まれた時間で、また改善する
改善がうまくいったら、それで終わりではありませんでした。現場の皆さんとQRコードを使った部品管理の仕組みを導入したり、設備をより少ない工数で動かせるように手を加えたり。古い設備を直して使い続けることで、固定費を抑えることにも取り組みました。
一つの改善で生まれた時間を、次の改善に使う。そうすると、また新しい余力が生まれます。この積み重ね自体が面白かったのです。
でも、本当は新しい製品にも挑戦したかった
その一方で、私はずっと、別の思いを持っていました。
「こんな技術があったら面白い」「こんな製品を作れたらどうだろう」
生産技術の仕事をしながら、開発や新規事業にも関わりたい。会社に何度もそう訴えていました。目の前の製品を効率よく作ることは重要です。でも、それだけを続けていたら、いつか作るもの自体がなくなってしまうかもしれない。既存の事業を支えながら、次の可能性も考えたかったのです。
これは私自身の希望です。改善で生まれた時間を、全員が新規事業に使うべきだとは思いません。仕事の負担を減らして、余裕を持って働けるようになる。それだって十分に価値のある成果です。
「当たり前にやっている仕事」を見直す
私がもう一つ取り組みたいのは、設備保全や点検の仕事の見直しです。
例えば、毎日確認している計器や設備。「昔から決まっているから」という理由だけで、同じ頻度、同じ方法で点検を続けていないでしょうか。もちろん、安全や法令、品質を守るために必要な点検は欠かせません。ですが、何を防ぐための点検なのか、どの頻度が妥当なのかを改めて考える余地はあるはずです。
カメラやAIで点検を自動化するのも一つの方法です。でも、その前に「そもそも、これは毎日見る必要があるのか」と問い直す。機器を導入すること自体を目的にしたくないのです。
生まれた時間を、会社の外にも向けてみる
もう一つ、最近強く思うことがあります。製造業の会社は、もっと自分たちの日々の仕事を発信してもいいのではないでしょうか。
今はSNSを通じて、企業が直接、自分たちの技術や取り組みを伝えられる時代です。特別な新製品の発表だけではありません。「今日はこんな改善をした」「こんな工夫で設備を長く使っている」。そんな日常の仕事にも、外の人から見れば価値があるかもしれません。
もし社員それぞれの経験や工夫を、会社として継続的に発信できたら。新しいお客様や、思いもよらない企業とのつながりが生まれる可能性があります。
もちろん、全社員に毎日投稿を義務づけたいわけではありません。顧客情報や技術情報の扱いには注意が必要ですし、発信が新たな負担になっては本末転倒です。発信したい人が、安心して会社の取り組みを伝えられる仕組みがあればいいと思います。
改善の先に、何を生み出すか
コストを下げることも、生産性を上げることも、会社を存続させるために必要です。私自身、その仕事にやりがいを感じてきました。
ただ、改善の成果を数字だけで終わらせたくありません。生まれた時間を、次の設備改善に使う。新しい製品を考える。現場の負担を減らす。自分たちの技術を外へ伝える。選択肢はいくつもあります。
「改善して終わり」ではなく、「改善した先に、何を生み出すか」。
私は、そこまで考えるものづくりを増やしていきたいのです。

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