毎日、当たり前のようにやっている仕事。それが、他の会社から見ると、とても高度な技術だったりします。
私は以前、レンズを磨いている協力会社を知っていました。家族で仕事をしている会社で、酸化セリウムという研磨材を使い、レンズの表面を丁寧に磨いていました。
柔らかい布を使い、傷をつけないように、形状を変えないように、力を加減しながら磨く。毎日その仕事をしている人にとっては、いつもの作業だったかもしれません。でも私は、それは誰にでも簡単にできる仕事ではないと思っていました。
当たり前にできることほど、強みだと気づきにくい
長年続けている仕事は、本人にとって当たり前になります。どれくらいの力で磨くか。どこで手を止めるか。どんな状態なら仕上がったと判断するか。
経験を重ねた人は、こうしたことを自然にできるようになります。でも、その技術がどれほど難しいのか、他社と比べてどこが優れているのかと聞かれると、なかなか説明できないことがあります。
私は、ここに一つの問題があると思っています。自分たちがやっている仕事を、十分に測定し、解析できていないのではないか。
職人の手加減を、数字で見てみたい
例えば、レンズを磨く前と後で、形状はどれくらい変わっているのでしょうか。表面の粗さはどうなっているのでしょうか。磨く場所によって、仕上がりに違いはあるのでしょうか。
適切な測定機を使えば、加工前後の寸法や形状、表面の状態を詳しく調べられます。光学部品であれば、干渉計などによる形状評価が役立つ場合もあります。測定したい対象によって、使う装置や評価方法は異なります。
そうやって分析してみると、今まで「このくらいの力加減」と感覚で行っていた仕事が、実は非常に小さなばらつきで仕上がっていると分かるかもしれません。逆に、どこにばらつきが出るのかが見えれば、技術をさらに磨くきっかけにもなります。
職人の感覚を数字に置き換えてしまいたいわけではありません。私は、その感覚のすごさを、数字でも伝えられるようにしたいのです。
数字にできれば、比較できる
例えば、ある加工設備では寸法のばらつきが±10μm程度、別の設備では±5μm程度だったとします。
同じ製品、同じ測定条件で、十分な数の加工結果を調べたのであれば、設備の特徴を比較する手がかりになります。ただし、その数字だけでどちらが優秀と決められるわけではありません。加工速度や対応できる材質、工程能力、測定の確かさなども考える必要があります。
それでも、「うちは精密加工が得意です」と言うだけの場合と、「こういう条件で、これくらいの精度を安定して実現しています」と説明できる場合では、技術の伝わり方が違うと思うのです。
測定機は、直接製品を作らない
ところが、こうした解析や測定に投資するのは、簡単ではありません。
新しい加工機を買えば、生産量が増えるかもしれない。新しい設備を入れれば、工程が短くなるかもしれない。そうした投資は、効果を比較的説明しやすい面があります。
一方、測定機や解析装置は、それ自体が製品を作るわけではありません。だから投資が後回しになりやすいと感じます。
でも、測定によって不良の原因が分かれば、品質改善につながります。工程の本当の能力が分かれば、無理な公差や検査を見直す材料にもなります。そして何より、自社の技術を客観的に説明できるようになります。
もちろん、高価な測定機をどの会社も購入する必要はありません。外部の試験機関や大学、測定サービスなどを活用する方法もあるでしょう。大切なのは、まず何を明らかにしたいのかを考えることです。
自分たちの強みを知ることが、次の仕事につながる
私は、製造業の会社には、まだ自分たちで気づいていない強みがたくさんあると思っています。
毎日当たり前にやっている作業。何十年も続けてきた加工。ベテランが何気なく調整している設備。その中には、他の業界が必要としている技術があるかもしれません。
でも、自分たちの強みを言葉や数字で説明できなければ、外の会社にもなかなか伝わりません。
測ることは、合格か不合格かを判定するためだけではない。自分たちの技術の価値を発見するためにも使える。
私は、そんな測定や解析の使い方をもっと増やしたいと思っています。現場の当たり前の中にある技術を見つけ、その価値を伝え、新しい仕事につなげていきたいのです。

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