頑張った人が報われる会社。人は、成果だけを見てほしいわけじゃない

小学校の運動会で、100メートル走をしたことを思い出します。

走る前は、正直めんどくさい。疲れるし、何のために走るのかもよく分からない。でも「よーい、ドン」と言われると、なぜか必死にゴールを目指してしまう。

私は、人にはもともと、何かを最後までやり切りたいという気持ちがあるのではないかと思っています。もちろん全員が同じではありません。でも、仕事でもあの感覚に似たものを感じることがあります。

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挑戦したい。でも、失敗は怖い

新しいことをやろうとすると、必ずリスクが出てきます。

勝手に進めて失敗したらどうしよう。周りに迷惑をかけるかもしれない。今までどおりやっていたほうが安全かもしれない。

そんな気持ちがあるから、挑戦したくても一歩が出ない人は多いのではないでしょうか。

会議室に人を集め、みんなで相談しながら進めることにも意味があります。知恵が集まり、失敗を防げることもあります。ただ、関わる人が増えるほど、自分自身が最初から最後までやり切ったという実感が薄くなる場合もあると感じています。

私は、自分の才能を使い切って何かを成し遂げたときの感覚を、とても大切にしています。

自己実現の、その先にあるもの

マズローの欲求段階説には「自己実現」という考え方があります。そして、晩年の議論では、自分を超えた他者や大きな目的とのつながりを重視する「自己超越」も語られています。

私は、自分の才能を発揮して最後までやり切る達成感に加えて、その喜びを誰かと分かち合えたときに、さらに大きな充実感が生まれると感じています。

「自分はここまでやった」。それだけでも嬉しい。でも、誰にも見てもらえず、誰にも伝わらないままだと、どこか虚しさが残ることもあります。

人は、結果の数字だけを認めてほしいわけではないのだと思います。

上司が聞いてくるのは、進捗ばかり

私は、上司と部下の関わり方にも、もっとできることがあると思っています。

上の経営層から「あの案件はどうなっている」と聞かれた管理職が、部下を呼んで進捗を確認する。数字をまとめ、報告する。それ自体は必要な仕事です。

でも、それだけでは部下が何に苦労しているのか、どこで悩み、何を工夫しているのかまでは分かりません。

「あいつ、今こんなに頑張っているんだな」「あの仕事で困っているのか」。そんなふうに、まず相手に興味を持つことが大切だと思います。

何でも褒めればいいわけではありません。真剣に向き合っているからこそ、間違っているときは止めるし、困っているときは一緒に考える。そして、やり切ったときには、その過程も含めて認める。

「見直したよ」と言われた日のこと

私自身、若い頃に設備の改造を進め、上司から怒られたことがあります。

自分では良くなると思ってやったことでも、周りにはリスクがあります。今振り返れば、勝手に進めてはいけないこともあったと反省しています。設備の変更には、安全や品質の確認、関係者との合意が必要です。

それでも、改造した設備がうまく動き、成果が出たとき、上司からこんな趣旨のことを言われたことがあります。

「お前の無茶ぶりには正直腹が立った。でも、今の結果はお前のおかげでできている。見直したよ」

あの言葉は嬉しかったですね。

怒られたことが帳消しになったわけではありません。でも、自分が何をやろうとして、どれだけ頑張ったかを、最後には見てもらえた。だから「やってよかった」と思えたのです。

給与だけでは測れない。でも給与も大切

頑張った人が報われる会社というと、給与アップや成果報酬の話になりがちです。

もちろん、生活を支える給与や、公平な待遇は大切です。労働組合が賃金や労働条件の改善を求めることにも重要な役割があります。認める言葉だけで、正当な報酬の代わりにしてはいけません。

ただ、給与を上げればそれだけで人が幸せになるのかというと、私はそうではないと思っています。

自分の仕事に興味を持ってくれる人がいる。困ったときに気づいてくれる仲間がいる。やり切ったとき、一緒に喜んでくれる人がいる。

そんな経験が積み重なる職場は、数字だけでは表せない強さを持つのではないでしょうか。

頑張りを見ている人がいる会社へ

私は、全員に無理な挑戦を求めたいわけではありません。毎日の生産を安定して支えている人も、十分に認められるべきです。

挑戦する人も、現場を守る人も、それぞれの仕事には苦労と工夫があります。その過程を、周りの人がちゃんと見ているかどうか。

会社の制度を変えることも必要です。でも、その前にできることもあると思います。

隣で働いている人が、今どんなことに向き合っているのか。何に困り、何を成し遂げようとしているのか。少し興味を持って、声をかけてみることです。

頑張った人が報われる会社とは、成果の数字だけでなく、その人の挑戦や苦労を見て、喜びを分かち合える会社ではないでしょうか。

私は、そんな達成感のある仕事ができる社会を増やしていきたいと思っています。

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