技術を持つ会社と、困っている会社が出会えない理由

「うちには、こんな技術がある。何か新しい製品に使えないだろうか」

一方で、別の会社では「今の製品のこの問題、どうやったら解決できるんだろう」と悩んでいる。

私は、この二つがなかなか出会わないことが、ものづくりの大きなもったいなさだと思っています。技術を持っている会社と、困っている会社。それぞれが自分の会社の中だけで考えていては、点と点がつながりません。

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VHSの技術が、カメラのものづくりへ

私は前職で、技術を別の製品に生かしながら事業が変わっていく姿を見てきました。

例えば、かつてVHSのビデオヘッドを作っていた工場が、カメラのレンズや精密機器を組み立てる工場へと変わっていったことがあります。

作る製品は変わっても、小さな部品を研磨する技術や、ミクロン単位で加工する技術がなくなるわけではありません。長年積み重ねたものづくりの経験を、別の製品に生かすことができたのです。

私には、こうした事業転換がとても面白く感じられました。技術の価値は、最初に作っていた製品だけで決まるものではないのです。

DVDの技術が、スマートフォンの手ブレ補正へ

別の仕事では、DVDの光ピックアップに使われていたサスペンションワイヤーなどの技術が、スマートフォンのカメラに使われるOIS(光学式手ブレ補正)の技術へと発展していく経験もありました。

DVDとスマートフォンのカメラ。一見すると別の製品です。でも、精密な部品を支え、動かし、位置を制御するという技術の視点で見れば、つながる部分があります。

もちろん、以前の技術をそのまま移せば完成するわけではありません。新しい製品に合わせた開発や検証が必要です。それでも、すでに持っている技術が、新しい市場への入口になることを私は実感しました。

きっかけは、お客様の「こんなことできない?」

こうした経験を振り返ると、事業転換のきっかけには、お客様からの相談がありました。

「こういうものを作れないだろうか」

その問いに対して、自分たちの技術で試してみる。やってみたら、できる可能性が見えてくる。そこから新しい仕事につながっていく。

市場のニーズと、自社が持っている技術の強みが、うまく重なったのだと思います。

でも、いつも都合よく相談が来るわけではありません。自分たちの技術を必要としている会社が、どこで何に困っているのか。それを知る機会は、意外に少ないのです。

お互いに、違う問いを考えている

技術を持っている会社は、「今ある設備や加工技術で、次はどんな製品を作れるだろう」と考えています。

困っている会社は、「今の製品や工程の問題を、どうすれば解決できるだろう」と考えています。

どちらも真剣です。でも、お互いの声が届いていない。営業活動でも製品の紹介や商談が中心になると、まだ言葉になっていない困りごとまで聞き取るのは難しいのかもしれません。

私は、技術を紹介するだけでなく、相手が何に困っているのかを聞くことが重要だと思っています。そして、その困りごとを聞いたときに、「そういえば、あの会社にこんな技術があった」と思い出せるだけのつながりも必要です。

セラミックの話から、また新しい可能性が

以前、私はセラミックを扱う仕事に関わり、耐久性などの問題に悩んだことがあります。

そして今、JOINTSPARKSとして別のセラミックメーカーを訪問する機会があります。そこで「以前、こんなことで困っていたんです」と話すと、今まで考えていなかった解決方法や、新しいビジネスにつながるかもしれない。そんな予感があります。

まだ成果が出たという話ではありません。それでも、過去に自分が困った経験が、別の会社の技術と出会うきっかけになる。この可能性に、私はワクワクしています。

偶然の出会いを、もっと増やしたい

新しい事業は、必ずしもゼロから新しい技術を発明しなければ始まらないわけではありません。

ある会社が長年磨いてきた技術と、別の会社が抱えている困りごと。その二つが出会うことで、新しい製品や用途が生まれることがあります。

だから私は、製造業の横のつながりをもっと広げたいと思っています。技術を持つ会社を知る。現場で困っている人の話を聞く。そして、一見関係のなさそうな点と点をつないでみる。

「何か売れるものはないか」ではなく、「この技術で、誰の何を解決できるだろうか」。

私は、そんな問いから新しいものづくりが始まる場面を、もっと増やしていきたいのです。

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