【第2回】ツール導入によって改善という幻想 ― 「魔法の杖」は存在しない

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はじめに

ツールを導入すれば、きっと現場は変わる――。
そう信じて、多くの企業が新しいシステムを導入してきました。

私も何度もその瞬間を見てきました。
プレゼンは華やかに成功し、経営会議でも承認され、
「これで変われる」と誰もが信じる。

でも、そこから始まるのは“本当の現実”です。
ツールは決して魔法の杖ではない。
導入した瞬間に終わりではなく、むしろそこからが本番なのです。


華やかなスタートと、見えない疲弊

導入発表の日、拍手で迎えられるプロジェクトチーム。
経営層はROI(投資対効果)の資料を見ながら期待を膨らませる。
「これで効率が上がる」「報告も自動化される」「作業負荷も減るはずだ」

旗振り役に選ばれたのは、熱意のある若手。
「任せたぞ」と背中を押され、最初は誇らしさと使命感に燃えている。

だが、数週間が経つと、空気が変わり始める。

現場では戸惑いが広がり、操作マニュアルを見ながらため息が漏れる。
「思ったより時間がかかるな」「今までのやり方の方が早かったかも」
少しずつ、疲れと不満が溜まっていく。


現場に生まれる「見えない抵抗」

人は、自分の仕事を“奪われる”と感じるとき、本能的に抵抗します。
ツール導入は「効率化」ではなく、「自分たちのやり方を否定された」と受け取られることがある。

「このツール、何のために入れたんだ?」
「やることが増えただけじゃないか?」
そんな声が静かに、でも確実に広がっていく。

それでも、会議では前向きな報告が並ぶ。
「順調です」「予定通り進んでいます」
誰も本音を言えない。
なぜなら、プロジェクトを止める勇気を持つ人がいないから。


旗振り役の孤独

若手リーダーは、毎日報告書とにらめっこをする。
経営層には「成果を見せてほしい」と言われ、
現場からは「現実を見てくれ」と言われる。

板挟みの中で、理想と現実の狭間に立ち尽くす。

夜遅くまで資料を作り、
「あと少しで数字が出せる」と自分に言い聞かせる。
でも、思うような効果は出ない。
なぜなら、ツールを使う“理由”が共有されていないからだ。

現場に「なぜこれをやるのか」の理解がないまま、
「とにかく入力して」「慣れてほしい」と言われても、
人は動かない。動けない。


サブスク費用が、静かに会社を削る

導入から数か月後。
経営会議ではROIの再計算が繰り返される。
「最初の想定より成果が出ていない」
「効果が見えるまで、もう少し時間が必要かもしれない」

その間も、毎月サブスクリプションの費用が引き落とされていく。
導入費+月額利用料。
“改善効果”よりも“維持費”が目立ち始める。

ツールを入れたのに、なぜか余裕がなくなっていく。
その理由を、誰もはっきり言えない。
でも、皆どこかで気づいている。

――本当は、“ツールの問題”ではなく、“使い方と関係性”の問題だということに。


幻想を終わらせるとき

ツールを入れれば変われる。
そんな幻想は、もう終わりにした方がいい。

ツールは、改革の主役ではない。
主役は、それを使う人の心です。

“なぜそれを使うのか”を理解していないままでは、
どんな最新システムも意味をなさない。
むしろ現場を疲弊させ、改革を遠ざけてしまう。


まとめ

ツールは、変革の「きっかけ」にはなります。
でも「変革そのもの」ではありません。

ツールを導入した瞬間に終わるのではなく、
そこからがスタートです。

本当に問うべきは、
ツールがあることで人がどう変わるか。
そこに視点を置いたとき、初めて「現場改革」は動き出します。


次回予告

最終回では、ツール導入後に訪れる“焦りと再発”の構図、
そして本当に現場が変わるために必要な「人の意識」についてお話しします。

タイトルは――
【第3回】焦りのループを断ち切る ― 現場を変えるのは“人”の想い

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