
ものづくりは、もっとワクワクするものである。
これは、私がJOINTSPARKSを立ち上げるうえで大切にしている言葉です。そう考えるようになった原点は、社会人になってからではありません。中学生の頃にさかのぼります。
ドライバー一本で広がった世界
小さい頃から、家電を分解するのが好きでした。テレビやラジオをドライバーで開けては、中にある基板を眺めて感動していました。当然、家の人には怒られました。それでも、外から見ただけでは分からない仕組みが中に詰まっていることが面白くて仕方なかったのです。
中学生のとき、図書館で偶然、電子工作の本を見つけました。電子部品を組み合わせれば、自分の手でいろいろな機器を作れる。これには本当に驚きました。
お風呂の水位を知らせるブザー、スピーカーの増幅器、スイッチでランプを点けたり消したりする回路。少し難しいものではラジオもありました。本を読み、部品を買い、組み立ててみる。その時間が楽しかったのです。
初めて秋葉原に行ったときのワクワクは、今でも忘れられません。トランジスタの「2SC1815」という型番は、何十年たった今でも覚えています。抵抗器の色の帯から抵抗値を読み取る方法も、その頃に本で覚えました。
失敗も、怖さもあった
もちろん、失敗もたくさんしました。直流と交流の違いも、電圧と電流の違いもよく分からないまま電子工作をして、家庭用コンセントにつないで煙を出したこともあります。今考えると、とても危険なことでした。決して真似してほしくありません。
それでも、分からないことを調べて、作って、動かしてみる。失敗したら、なぜ動かなかったのかを考える。その先にある「できた!」という瞬間が、私にはたまらなく面白かったのです。
社会人になっても、同じ気持ちだった
社会人になって製造業の現場に入ったときも、私は同じようなワクワクを期待していました。
今の設備では一日に3,000個しか作れない。では、3,500個にするにはどうすればいいだろう。無駄な搬送を減らせないか。工程の順番を変えられないか。そんなことを新入社員の頃から考えていました。
ところが、提案しても「うるせえ」「言われたとおりにやれ」で終わってしまうことがありました。自分なりに考えたことを口にする余地がない。これは悲しかったです。
ただ、今なら分かることもあります。工場は、思いつきだけで条件を変えてよい場所ではありません。品質も、安全も、納期も守らなければならない。量産設備を勝手に触れば、周りの人やお客様に影響が出ることもあります。
課長に直談判して、失ったもの
当時の私は新入社員で、会社の中でどうやって物事を進めればよいのか、まだ分かっていませんでした。現場で改善案を聞いてもらえない。それなら、もっと上の人に話せばいい。そう考えて、組織の垣根を越え、課長に直接相談しに行ったのです。
「今、こういう改善ができると思うのですが、現場では話を聞いてくれません。課長はどう思いますか?」
課長は、新入社員だった私の話を聞き、実際に動いてくれました。そして現場に行き、「お前ら、このとおりやってみろ」と指示を出してくれたのです。
私は、自分の提案を通すために、課長の権限を使ったわけです。
結果はどうなったか。確かに現場は言われたとおりに動きました。でも、それは一瞬だけでした。「課長に言われたから、仕方なくやっている」。そんな空気が伝わってきました。
私はがっかりしました。そして、もっと大きなものを失いました。現場での自分の立場です。口をきいてもらえなくなったのです。結局、新入社員だった私は、その関係を元に戻せないまま終わってしまいました。似たような失敗は、その後も繰り返しました。決して一度の経験で賢くなれたわけではありません。そうやって失敗を重ねながら、少しずつ相手の立場を考えるようになったのだと思います。
当時の私は、現場の人がなぜ動かないのか理解できませんでした。「やればできるのに、なぜやらないんだ」「自分の考えを理解しないあの人たちが悪い」。正直、そんな態度だったと思います。
でも、今は少し違う見方をしています。簡単そうに見える変更にも、品質や安全への影響を確かめる検証が必要です。もし問題が起きたら、誰が責任を負うのか。自分の担当範囲だけでなく、会社全体に関わることもあります。毎日量産を守ってきた製造のプロたちは、私が見えていなかったリスクを知っていたのかもしれません。
もちろん、単に面倒くさいという気持ちもあったでしょう。実際に何を考えていたか、当時の私は聞けていませんでした。だからこそ今は、反対する理由を決めつけず、まず相手の事情を知りたいと思います。
改善案を通すことと、現場の人に納得して動いてもらうことは、まったく違う。正しいと思うことでも、相手を飛び越えて上から押しつければ、信頼は失われる。私はそれを、新入社員の頃に身をもって知りました。
「やるな」で終わらせず、試せる道をつくる
だからこそ、アイデアを実現するには手順が必要です。何を変えたいのか。なぜ変えたいのか。品質や安全への影響は何か。どう評価し、問題がなければどう正式な工程に反映するのか。
製造業には、4M(人・設備・材料・方法)の変更を管理する仕組みがあります。変更の内容に応じて必要な申請や評価を行い、関係者の承認を得る。そうすれば、単なる思いつきを、責任ある改善提案に変えられます。
大企業ほど、こうした手続きには時間がかかるでしょう。正直、遠回りに感じることもあります。でも、その仕組みを知り、使いこなすことも技術者の仕事だと思います。
もちろん、4M申請を出せば何でも実現できるわけではありません。提案を受け止める上司や組織の姿勢も必要です。「言われたとおりにやれ」で止めるのではなく、「試すなら、何を確認すればいいか」と一緒に考えられたら、現場はもっと面白くなるはずです。
大企業だからこそ、変えられることがある
私は、大企業には世の中を変える力があると思っています。働く人も、設備も、技術も、関わる取引先も多い。そこで新しい働き方や改善の進め方が根づけば、影響は一つの工場にとどまりません。
大切なのは、全員に挑戦を強いることではありません。日々の生産を確実に支える仕事も、ものづくりに欠かせません。そのうえで、「もっと良くできるかもしれない」と思った人が、声を上げ、正しい手順で試せること。その自由はあってほしいのです。
あの頃のワクワクを、もう一度
中学生の私にとって、電子部品は小さな可能性のかたまりでした。部品を組み合わせると、今までなかったものが動き出す。あの感動は、設備や工程を改善するときも、新しい製品を考えるときも、根っこでは同じだと思っています。
失敗してもいい、という無責任な話ではありません。守るべきものを守りながら、考えたことを形にできる。その道筋を、もっと多くの現場につくりたい。
ものづくりは、もっとワクワクするものである。
私は今も、本気でそう思っています。

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